春風が誘うころ

ダメ人間の好日日記

パイセン

 

今年度一緒に働いた先輩のひとりは東京に行くことになったので、引っ越しもあり、今日が最終出勤日だった。

 

その先輩は「耐えの一年だから」と、年度が始まったばかりの春にはすでに年度末を見据えていた。聞いたときは「???」と頭に疑問符が浮かんだけど、まぁ直ぐに言わんとする意味は理解できた。

 

この先輩とは、本当に色々と話をした。

凄く雑談が好きな先輩で、お喋りしすぎて、部長に嗜められたこともある。美味しいお店を沢山知っていて、かなりこだわりが強く、よく上司と言い争っていた(互いに譲らないから、見ててヒヤヒヤしてた。)

ふたりで傷を舐め合い、耐えよう耐えようと一年を乗り越えた。理解者というか同志というかなんとも形容し難いけど、精神的に同じテーブルにこの先輩がいてくれて本当に助かっていた。

 

そんな先輩も今日が最終出勤日。業務も終わり、最後にふたりで話していたら、もうひとりの先輩がやって来て、話したそうにこちらを見ていた。

(なお、この先輩と私は相性がすこぶる悪く、結局最後までボタンは掛け違ったままだった。)

 

なんや?と思って視線を向けると「いやー本当にお疲れ様。」とかなり強引な角度で入り込んできた。

 

努めて明るい声で喋っている。

この一年のこと、東京での仕事のこと、あとは俺に任せといてねエトセトラ……

相変わらず凄いなぁとある意味感心していると、その先輩はこれまた急に一年を総括した。

 

「まぁ色々あったけど、振り返るとあれだね。

凄くいい一年だったね。」

 

「「マジすか。」」

 

それまでただただ「はぁ…」という感じで聞いてた私と先輩も思わずハモってしまった。

 

いい一年だった、か。……マジですか。

 

これが嫌味を含んだ言い方ならば、まだ「ソウデスネ」と話を合わせて終わりなのだが、その先輩の眼には曇りが一切なく、本気でそう思っているような眼だった。正気か?

 

やはりこの人とは相容れないなと再確認して、

いよいよ明日が今年度最終日。

 

上司になんと言って終わろうか、

何言っても「あっはい」で終わりそう。